ZOWIE GEAR AM-FG WHITEレビュー

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「AM-FG」は、名門プロチームSK-Gamingと旧Ninjas in Pyjamas出身で、「生きる伝説」と称された元プロゲーマーAbdisamad 'SpawN' Mohamed監修によるゲーミングマウス「AM」のクリア塗装バージョンである。(FG: Full Glossy、全面光沢塗装)

「AM BLACK」「AM-GS BLACK」との違いとして、ラメが入ったパールホワイトの光沢塗装となっている。加えて、公式にはアナウンスされてはいないが、スイッチが柔らかめに調整されている。




外見とカタログスペックからは分かりにくい、アグレッシブなプレイスタイルへの最適化

 AM-FGは、左右対称の光学センサー搭載ゲーミングマウスではあるが、Microsoft IntelliMouse Optical(IO1.1)の実質的後継と呼べるような機種ではない。IO1.1のようなかぶせ持ち対応オールラウンドなマウスを期待するとガッカリする。
どちらかというと、SpawNのような正確無比・超人的なAIM力をもって、指先での正確無比なコントロールで連続キルを決めていく、つまみ持ち・ハイセンシのプレイヤー向けのデザインである。
前すぼみで背が低いのだが、つまみ持ちスタイルで指先に神経を集中してみると、自然とフィットするのが分かるだろう。掌はベッタリ付けず、手の付け根だけマウス後端に添えるようにくっ付け、生卵を包むような握り方になる。
マウスの移動範囲は自然と狭くなるので必然的にハイセンシ設定に変えたくなるかも知れない。もし移動範囲を広く取りたい、またはローセンシで使いたい場合は肘・肩の力を抜くと良い。

 SpawN仕様のマウスとして開発されたAMがあまり評価されていないのは、IE3.0(Microsoft IntelliMouse Explorer 3.0)+かぶせ持ちスタイルのHeatoNとは対照に、SpawNの具体的なプレイスタイルがあまり認知されていないことに起因しているのかも知れない。
彼の現役時代のフラグムービーを見れば驚くに違いないが、振り向きざまに瞬時に照準を合わせて連続キルを鮮やかに決める神がかったシーンが多い。要するに、あのCS1.6史上最高水準のAIM力を信じて前線に立ち、ターミネーターのごとく敵を次々と処刑していく、極めてアグレッシブなスタイルこそAMの想定するプレイスタイルである。

SpawNがIO1.1を愛用していたことから、市場はAMをIO1.1後継と目していたが、恐らくはSpawNにとって、IO1.1は自分のスタイルに当時最も近いマウスではあったが理想からはまだ遠く、しぶしぶ使っていたのではないだろうか?



古くて新しい光学センサー

 ゲーミングマウスの定番である直線補正なしのAvago ADNS-3090に、ZOWIE独自の光学レンズを組み合わせ、3090のトラッキング性能を備えつつ、3090の欠点である長いリフトオフディスタンスを1.5mmまで短縮し、かなり使いやすくなっている。
 そして本体重量88gと軽いので、マウス切り返しのための持ち上げは最小限で済み、交戦中でも隙のないAIMを維持できる。トラッキングは非常に素直で、直線補正も無いのでフィーリングは軽快である。
  直線補正が無いのでヘッドショットラインをキープし辛いように思えるが、左右対称マウスのメリットとしてマウス本体の向きを感覚的に把握できるので、ヘッ ドショットラインを維持しながらの水平方向AIMと、補正なしのメリットを生かしたフリーレンジなAIMを感覚的に切り替えるとプレイしやすいだろう。
  レンズ変更による光学特性変化に対応するためだろうか、解像度は450/1150/2300dpiと微妙な数字で、一応400単位の数字に近いdpiを持 たせてみたのだろうが(400/1200/2400のつもりか?)、特に、キッチリ400dpi単位の解像度であることを好む古参ゲーマーには不評のよう である(他のマウスのセンシ設定をそのまま持って来れないので)。



だいぶ柔らかくなったボタン

 マイクロスイッチはOMRON製ではないが、レバレッジを調整したとのことで、AM BLACKと比べてだいぶ柔らかくなっている。サイドボタン含めて同じスイッチに変更されており、軽い力で押せるようになっていて嬉しい。
 ただし、ボタン表面がIE3.0のような分割式ではなく表面パーツ一体式で、表面パーツの曲げ抵抗ゆえに完全に自然なクリック感とまでは言い難い。
 色々試すと、マイクロスイッチの真上付近、先端に近いところを押すと良好な感覚が得られる。指先がマウス先端に寄るつまみ持ち(Fingertip grip)推奨したい。指先がボタン手前側に寄るつかみ持ち(Claw grip)には向かないかもしれない。
 良好なクリック感を得られるスイートスポットが狭いのは、マイクロスイッチの配置に起因するものであろう。スイッチを真上から直に押し込むような感覚の好みで、製品の評価が大きく別れると思う。フェザータッチで反応するボタンを好むプレイヤーには向かない。




ゲーミングマウスに相応しいスクロールホイール

 e-Sports向けゲーミングマウスに相応しい、チルト機構の無いホイールである。ノッチ数は16で、18~21ノッチが通常なので、間隔はかなり大きめである。
 AM BLACKの赤から白に変更、ボディカラーとの統一が図られるとともに、メインボタン同様に柔らか目のスイッチが採用されているようだ。
  上下スクロールの操作感はカッチリしていて極めて良好、誤爆しにくく、かつ、何ノッチ回したか正確に把握しやすいので、特にCS1.6等でジャンプをバイ ンドするには最適だろう。ノッチの硬さも程々なので、武器選択・ズームなどの操作も気持ち良く行える(いわゆる「ぬるぽホイール」)。
  ただし、スイッチが柔らかくなったにせよ、ノッチの方が柔らかく、ホイールを押し込むにちょっと力が要る。グレネード等、3番目のメインボタンとして使う のは少々厳しい(どのマウスも似たより寄ったりだが)。あくまで上下に回すためのものと割りきったほうがいいかも知れない(個人的に、ホイールに採用するマイクロスイッチは1段階柔らかいタイプを採用して欲しいものだと思う)




柔らか目のUSBケーブル

 ZOWIEマウスで最近採用されている、ヘナヘナ・軽量なビニール被覆のコード。ケーブル自体に張りが全く無いので、芯線も細い物が使われているようである。
 色々意見はあるようだが、ケーブル自体の反発力がマウス操作に影響を及ぼしにくい無難なチョイスではないかと思う。
思いのほか丈夫であり、断線したという話はこれまで聞いたことはない。




総評

スイッチが常識的な固さになり、手を出しやすくはなっているが、アグレッシブなプレイに最適化された形状ゆえ、人を選ぶマウスというポジションは相変わら ずである。かぶせ持ちにこだわるプレイヤーには正直オススメできない。元からつかみ持ち、もしくはプレイスタイルを変更できる柔軟性のあるプレイヤーには 選択肢としてアリだろう。
 前線を切り開いて真っ先に交戦するハイセンシのアタッカーに向いているが、瞬時の判断と素早いAIMが求められるスナイパーの選択としてもアリだろう。AIMに自信があり、見える敵は全て一発で仕留めてやるくらいの勢いの好戦的なプレイヤー向けである。